滋賀県就労支援事業者機構shuroshien

会長:高 橋 祥二郎
罪を犯した人が再び罪を犯すことなく、善良な社会の一員として更生するためには彼らが社会に戻った後、就職の機会を得て、経済的に自立することが極めて重要であり、その就労を支援していく事が何よりも大切となっています。しかし、現実には、彼らの就職には課題や支障が多く、前歴を承知の上で雇用し、その立ち直りを支援しようとする雇用主は、そのほとんどが地域の篤志家や保護司等の個人的な関係にとどまっていました。
その後、日本経済団体連合会(経団連)が趣旨を理解し、経済界の立場から就労支援を通じて安全で安心な社会づくりに貢献しようと、平成21年1月に特定非営利活動法人全国就労支援事業者機構が設立されました。これにより、全国的な規模で協力雇用主の裾野を広げ、支える活動が始まりました。滋賀県でも具体的な支援活動を展開するため、経済団体の支援を取り付け、地元企業会員、団体会員からの会費等により「特定非営利活動法人滋賀県就労支援事業者機構」が、平成22年3月に設立されました。
また、刑務所出所者等の雇用や居住先の支援をいただける、協力雇用主を会員とした協力雇用主会の設立は、平成21年9月に大津更生保護協力雇用主会が発足し、その後も他の保護区で設立の機運が高まり、現在では、6地区に更生保護協力雇用主会が設立されています。当機構では、これらの地区更生保護協力雇用主会への活動助成を継続するとともに、令和6年度より、大津保護観察所の協力を得て、相互の連携と交流を目的に、情報交換会を開催しています。
犯罪を繰り返す人の特徴として、貧困、孤独・孤立などの生きづらさを抱え、身近に相談相手を持たない人が多いと言われています。社会で生きることをあきらめ、刑務所へ戻りたいという気待ちから、万引きや無銭飲食などの再犯をしてしまう人もいます。刑務所を居場所にする人を増やさず、自暴自棄に陥ったり社会への敵意を募らせたりする前に、早期に社会の一員として復帰する機会を用意することが、社会の安全のためにも大切であるという考えのもと「居場所と出番」の確保・充実を目的とした就労支援の様々な施策が行われるようになりました。法務省は、平成23年度から、更生保護就労支援事業を民間への委託事業として創設し、刑務所・少年院における面接、雇用先の開拓、就労調整、就労後のフォローなどをきめ細かく行うようになりました。平成27年度から協力雇用主に対する「刑務所出所者等就労奨励金」制度が始まりましたが、国の制度に先んじ、当機構が対象者を雇用された協力雇用主へ雇用奨励金の支払いを実施していたことは特筆すべきことと自負しています。
平成28年度からは、全国機構のスタッフ配置事業の助成を受け、協力雇用主の皆様のご協力をいただき、保護観察対象者や更生緊急保護対象者の就労・定着・居住の支援を始めました。県下では滋賀好善会のみが宿泊型保護事業を実施していますが、常に定員に近い収容がなされているため、住居を確保していただける協力雇用主は大変貴重な存在です。また、住まいと就労が決まっても、初めての給与が支払われるまで、生活を維持することができないため、全国に先駆け、協力雇用主を経由した生活支援金の支給も始めています。
平成31年3月には、滋賀県更生保護事業協会、滋賀県保護司会連合会、滋賀県更生保護女性連盟と共に、大津駅前の逢坂ビル3階に滋賀県更生保護ネットワークセンターを開設しました。更生保護における就労支援は、単に職を求めるだけの人への支援や、労働力だけを求める事業者に応じることでないことを肝に銘じ、一人一人の事情や特性を踏まえた、再犯防止につながる適切な支援を行なうため、大津保護観察所や滋賀県を始め、各機関、団体との連携をより一層深め、重層的な事業の推進に努めます。
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